エウレカの憂鬱

音楽、映画、アニメに漫画、小説。好きなものを時折つらつら語ります。お暇なら見てよね。

【映画感想】『海洋天堂』平凡にして偉大なるすべての父と母へ

素晴らしい映画に出会えた。 心を深く揺さぶられ、見終わったときに胸の中を暖かく重たい水で満たされたような、あるいは胸に大きな穴が空いてしまったような、切ないような、哀しいような、それでいてどこまでも優しく愛しい言葉にできない感情に打ちのめさ…

【映画感想】『ヒットマン(殺手之王)』

「ヒットマン」と検索しても数ある作品に淘汰され全く出てこない「ヒットマン」ことジェット・リー主演「殺手之王」の話をしよう。 あらすじ 香港でヤクザな商売をしていた日本人社長が炎の天使と呼ばれる(広東語だと熾天使)に殺された。社長のかけていた…

【映画感想】『メイド・イン・ホンコン(香港製造)』

90年代香港は子供ながらに憧れの街だった。原色のネオンの看板、夜も眠らない高層ビル群の夜景、魔窟・九龍城砦、カンフースター、アジアであってアジアでない大都会。大人になって初めて訪れたときのあの高揚感は今でも忘れられない。ただその時すでに返還…

【アニメ紹介】『パンスト』愛すべきアメリカン風おバカコメディ

私は子供の頃テレビで『オースティンパワーズ』をみてあまりの下品さに驚いた思い出がある。それと同時に、アメリカのコメディのあまりの明け透けさに一種の異文化への憧憬のようなものを覚えたのも確かである。 子供の頃のそんなお下品でおバカで飾らない底…

【映画感想】『ダニー・ザ・ドッグ』イノセントなジェット・リーにメロメロ

リュックベッソンの作る映画は『レオン』しかり『グランブルー』しかり、イノセントな男の描写が秀逸である。 ベッソン作品は物語の辻褄よりも感情やロマンを優先する作風なので、合う人には合うが合わない人には合わない。 ちなみに私は好きな方だ。 本作は…

【映画感想】『サスペリア(2018)』

友人に勧められてみたホラー映画。 スナック片手に観れる程度のゴアで、ホラーというよりサイコスリラーのようなかんじ。 ちょっとくすんだ東欧系のカラーリングや、レトロなファッションと舞台美術、カメラワークなんかは大変かっこよかったのだが、一度見…

【映画感想】『野火』

塚本晋也監督の『野火』。 8月15日なので戦争ものをという謎の義務感でprimeで見つけたこの作品を視聴。前評判にビビりつつ見たが、やはり前評判通りだった。 フィリピンのジャングルで飢餓と銃撃の恐怖のなか彷徨う主人公を追う本作、敵が潜むジャングルに…

【漫画考察】『鬼滅の刃』見え隠れする鬼退治と製鉄民

今回は、最近話題の鬼滅の刃を取り上げてみたい。 直接的なものはある程度避けたつもりだが、関係性なんかのソフトなネタバレがあるので単行本未読の方は注意注意! 諸兄は鬼滅の刃に散りばめられたあるコードにお気づきだろうか。 キーワードとなるのは〝鉄…

【漫画紹介】『水鏡綺譚』無常の中に優しさが灯る中世妖怪草子

近藤ようこ氏の作品は不思議な魅力を持っている。 極力省かれた線や曖昧な背景、まるで 学生時代ノートに書き綴った漫画のような作画など、最近の書き込まれた漫画に慣れたものにはいささか物足りなく感じられるかもしれない。 しかし読んでみれば、その漫画…

【小説紹介】『残穢』これは怪談小説の極みである

絶対に家に置いておきたくない本。 『残穢』を検索すると必ず出てくるのがこの言葉である。これは元を辿れば、本作が山本周五郎賞を受賞した際の審査員の言であるのだが、読んだものはその理由を十二分に理解できる。 そう、本書は本当に家に置いておきたく…

【映画感想】『グラン・ブルー』

たまには感傷的に映画を語ろう。 初めてリュック・ベッソン監督の 『グラン・ブルー』を観た。 透明感のなかに残酷さと孤独感がたゆたい、しんと心に染み入るような静謐な映画だった。 この映画を見たときの明るくて陽気なのに哀しいというこの空気感覚は、…

【漫画紹介】『彼方のアストラ』極上のSFミステリー

『彼方のアストラ』がこのマンガがすごい一位になったそうな。 既読者からすると当然の結果なのだが、この機会に多くの人に知ってもらえるというのは嬉しい。 これを機に今まで書こう書こうと思って下書きに眠っていたこの感想をあげちゃおうと思う。 あらす…

【漫画紹介】『YAWARA!』オリンピックに向けてテンションあげよう!

正月のテレビ欄を見たらおや? そこにYAWARAの6文字が。 20年以上前の作品をなぜ今? と思ったが、そういえば来年は東京五輪だ。YAWARAを観ながらオリンピックへの機運を高めようぜ! ということだろうか。 YAWARAは20世紀少年の作者である浦沢直樹氏がビッ…

【アニメ考察】『どろろ』と民俗学的モチーフ おかわり

散見される民俗学的モチーフ 前回までの記事では、百鬼丸の出自についていくつかのモチーフを元に考察してみた。 今回は前回までの記事で拾えなかったモチーフについて書こうと思う。 アニメの進行に沿って増やしたいくのでもし興味がある方がいたならば、思…

【アニメ考察】『どろろ』と民俗学的モチーフ 後編

【アニメ考察】『どろろ』と民俗学的モチーフ 前編 - エウレカの憂鬱 前編のつづき 4.百鬼丸は鬼か桃太郎か 少し戻るが百鬼丸が捨てられた理由を、もう少し時代を下って考えてみよう。 百鬼丸は手足も目鼻もない不具の体であり、これは一種の異常出生である…

【アニメ考察】『どろろ』と民俗学的モチーフ 前編

ちょっと論文ぽいタイトルを気取ってみたが、内容はまあまあ薄味であると先に言っておく。どのくらいかというとカルピスを10倍の水で薄めたくらいでございますのでそこんとこよろしく。 1.あらすじ 2.流された英雄、百鬼丸 3.百鬼丸のモデルは恵比寿様? 4.…

【アニメ感想】『どろろ』古橋監督なら間違いない!

漫画の実写化と往年の名作のリブートには期待しない事にしている。その理由はこんな末端のブログまでお読みになる諸氏には言わずとも伝わることと思う。 さて、2018年秋、手塚治虫の未完の名作『どろろ』がリブートすることを知った。個人的には『火の鳥』、…

【雑記】一枚絵の魅力

絵のある漫画は名作だ。 漫画は絵で出来てるんだから当たり前だ、と言われるだろう。 ここでいう絵とは印象的に考え抜かれて構図で絵画のそれのように一枚でドラマを描き切る、「絵になるねえ」の絵である。 コマとその行間には常に時間が流れている漫画とい…

【漫画感想】『カクシゴト』パパの秘密のかくしごと

『カクシゴト』は『かってに改蔵』や『絶望先生』の久米田康二 の最新作である。 後藤可久士には娘の姫に重大な秘密を隠していた。それは自身が下ネタ漫画家、つまり"描く仕事"をしているということである。カクシゴトは可久士と天然娘の姫の周りで巻き起こ…

【映画感想】「実写版BLEACH」杉咲花ちゃんのルキアはとても良かったが……

実写版BLEACHを観てきたのでその感想を書こうと思う。 まずブリーチとはなにかというと、ジャンプで連載をしていたバトル漫画である。略称は鰤。幽霊が見えるオレンジ髪の高校生黒崎一護がひょんなことから出会った死神の少女朽木ルキアに力を譲渡され、死神…

【漫画紹介】『ハイスコアガール』我が愛しの90年代ノスタルジー

90年代があの頃の仲間入りをしたのはいつだったろうか。 私の話になり恐縮だが、小学校から中学校時代を丸々過ごした90年代は、バブル崩壊、阪神大震災、オウム事件、雲仙の大噴火など暗い出来事ばかりが記憶に残る一方、アニメやゲームなどの表現分野では…

【アニメ紹介】世界を革命せよ『少女革命ウテナ』

1997年に放映され、華麗な少女漫画風の絵柄と前衛芸術的な手法を駆使した演出、どろどろの愛憎絡み合った心理描写、恣意的で哲学的でありながら謎めいたストーリーなど、アバンギャルドな作風で現在でもカルト的な人気を誇る本作。監督は美少女戦士セーラー…

【漫画感想】『不滅のあなたへ』壮大なモラトリアムの物語

不死身の存在フシと、彼が遭遇する人々の生と死。生と死を通してフシは少しづつ生きることを学んでいく。これは生きるとは何か、人間とは何かを描いた叙事詩。 第1章 孤独な少年との邂逅フシ(この時点で名前はないが便宜上この名で呼ぶ)の誕生から雪に閉…

【漫画感想】『ミスミソウ』世にも凄惨な復讐譚

胸糞サスペンス復讐譚。 ミスミソウを宣伝する際わたしならこういうコピーをつけるだろう。この本は良心を横に置いてから読むことをお勧めする。グロ耐性のない方、心が大変清らかで優しい方も見ないほうがいいだろう。 おおまかなあらすじをいうと、薄幸の…

【ドラマ感想】『新選組血風録(1998年)』

新選組。 幕末。浅葱のだんだら羽織を靡かせ、不逞浪士を斬り京の町を震撼させた壬生の狼。 歴史ファンでなくとも名前くらいは知っているであろう。 どういうわけか新選組には熱烈なファンが多い。もちろんわたしもその一人である。そう言ったファンには、絶…

【アニメ考察】『おそ松さん』記号とリアルの狭間

おそ松さんは、言わずと知れた赤塚不二夫のギャグ漫画『おそ松くん』を原作(原案?)としたギャグアニメであり、一期放送当時爆発的人気を博し、今放送されている二期もこの三月に無事最終回を迎える。 賛否色々あった二期であるが、わたし個人的には一期に…

【映画感想】ドラえもん短編映画③『がんばれジャイアン』

ドラえもん短編映画最後の一本は、まさかのジャイアンが主役である。 これは隠れた名作。 ジャイアンの男気が堪能できること請け合いな、ジャイアンファンにはたまらない一本である。メインはジャイアンとジャイ子。 ドラえもん、のび太、しずかちゃん、スネ…

【映画感想】ドラえもん短編映画②『のび太のぼくの生まれた日』

ドラえもん短編映画感想、前回は大人のび太の話だったが、今回は子供のび太の話である。 家出をしたのび太が、過去に遡り自分が生まれた頃の両親に出会うというお話。 冒頭から一貫して描かれていた一本の木。ファミリーツリーとしての野比一家の軌跡と一本…

【映画感想】ドラえもん短編映画①『のび太の結婚前夜』

大山版のドラえもん後期の短編は、大人向けにも十分通用するハイクオリティなものばかりである。むしろ大人になってみるとよりグッとくる。 そんな素敵な短編映画のうちいくつかを3回に分けて紹介したい。 ちなみに名作と誉れ高い『おばあちゃんの思い出』は…

【アニメ感想】『伊藤潤二コレクション』グロと怪奇と時々ユーモア。一周回って愛おしい。

伊藤潤二作品との出会いは新宿のカプセルホテルの談話室の、やけにマニアックなタイトルが並ぶ本棚の一角で見つけた『富江』であった。その耽美な絵柄と不条理な内容は新宿の奇妙な一夜とともに心に刻まれた。刻まれはしたが、ディープなエログロナンセンス…