エウレカの憂鬱

音楽、映画、アニメに漫画、小説。好きなものを時折つらつら語ります。お暇なら見てよね。

【映画紹介】『スリーピーホロウ』ハロウィンの夜はゴシックホラーを……。

今回はティムバートン監督作品の『スリーピーホロウ』を紹介する。

主役はもちろんジョニーデップ。個人的にはティムバートン作品の中で「ビッグフィッシュ」「シザーハンズ」と共に最も好きな作品である。本作はアメリカ・ニューヨーク州に伝わる首なし騎士の伝説を基にワシントン・アーヴィングが執筆した小説を原作としたゴシックホラーである。

物語は新世紀を目前とした18世紀末のアメリカ北東部。ニューヨーク市警の捜査官イカボットは、首なし猟奇殺人事件捜査のため、森に囲まれた小さな村スリーピーホロウを訪れる。さっそく捜査を開始するイカボットであったが、住人たちは揃って事件の犯人は首なし騎士の亡霊であると主張する。科学捜査を信念とするイカボットが否定する中新たな殺人事件が……。

ホラー耐性がある人にはむしろマイルドなくらいだが、心臓の弱い方や残酷シーンの苦手な方はご覧にならない方が良いだろう。
首なし殺人事件、首なし騎士ときたのでお判りとは思うが、ジャコバン派もかくやと言わんばかりの首チョンパ祭りだからである。彩度を落とした映像でいくらか緩和されているものの、生首や血しぶきの描写もある。
とはいえ、ナイトメアビフォアクリスマスを筆頭にブラックユーモアに長けたティムバートン監督作品であるから、ただの猟奇シーンにはならずどこかユーモラス、それでいて怪奇で耽美な雰囲気たっぷりで魅せてくれる。

ここからはスリーピーホロウの楽しみ方と題して、私的映画の魅力を語っていくので、よろしければ参考にされたい。ちなみに少しだけネタバレありなのでご注意(物語の核心には触れないよ!)

①ゴシックホラーな雰囲気にぞくり
魔術が生きており、幽霊騎士が徘徊する不気味な森、その森に閉ざされた古めかしくうら寂しい村スリーピーホロウ(眠れる窪地)。薄暗い画面越しに伝わる背すじが泡立つような空気感(過度に主張しすぎないBGMも無意識に緊張を高めてくれる)は、視聴者をあっという間に物語の中へ引きこんでくれる。ホラーものは何より雰囲気が命だが、薄暗い畑の中に佇むお化けカボチャのかかし、マジックランタンが映し出す魔女の影、霧深い森、クリスティーナ・リッチ演じるカトリーヌのどこかクラシカルで気品ある佇まいなどなど、小物から画面の色遣い、シーンの端々に至るまで世界観が完成されているので、安心して物語に入り込むことができる。

②イカボット警部がヘタレかわいい!
ジョニー・デップ演じるイカボット・クレーン警部はニューヨーク市警の鼻つまみ者。ずさんな捜査しかしない市警でひとり科学捜査を進言するも煙たがられている。
そんなイカボット警部がチョイチョイ見せるヘタレっぷりに注目。

ヘタレ①首なし騎士に遭遇し、恐怖のあまり気絶!

ヘタレ②首なし騎士にびびって混乱!
村を訪れた時

村人「犯人は首なし騎士の仕業だ」
イカ「そんなものいない(キリッ)」
首なし騎士と遭遇後

イカ「犯人は首なし騎士だ!(ガクブル)」
村人「知ってるよ、最初から言ってんじゃん」
イカ「いや君達は分かってない!」
村人「……(なんだこいつ)」

ヘタレ③村はずれに住む魔女の家を訪れるも、びびってマスバス(助手の子供)を盾にする。

ヘタレ④ふつうに蜘蛛怖い。

などなど。
基本的には正義感に溢れ、首なし騎士の謎にも敢然と立ち向かうイカボットさんだが、冷静に振舞っているものの、しばしば上記のようなヘタレな一面が見え隠れする。イカボットの隣にいるせいで助手の少年が何倍も男らしく見えるほどである(事実マスバスは本当に頼りになる男である)。
頼りなく繊細そうな雰囲気に母性本能をくすぐられる女性も多いことだろう。ちなみにこの時のジョニデは髪型といいちょっと稲垣吾郎に似ている。

③かわいいカトリーナと豪華出演者たち!
カトリーナを演じるクリスティーナ・リッチは、日本では何かと怪奇チックな作品でお馴染みの女優さんで、「アダムスファミリー」ではクールなアダムス家の長女ウェンズディを、「キャスパー」では幽霊屋敷に越してきた少女キャットを演じている。
なるほど、彼女のクラシカルで品のある顔立ちとミステリアスな雰囲気は、古い慣習の残るスリーピーホロウの令嬢カトリーナにぴったりである。
カトリーナの健気でどこか魔術的な美しさにはイカボットならずとも虜になってしまうはずだ。クリスティーナ・リッチってブロンドが結構似合うと思う。
ジョニー・デップクリスティーナ・リッチの他にも「ハリーポッター」のダンブルドア校長を演じたマイケル・ガンボン、映画「ドラキュラ」でドラキュラ役を務めたクリストファー・リーなど有名な俳優たちが出演している。
中でも首なし騎士を演じたクリストファー・ウォーケンのかっこよさといったらない。

③ミステリーとしての面白さ
この物語の面白さの1つに、謎解き要素がある。都会の探偵が古い因習の残る村で事件に遭遇するというのは、シャーロックホームズや横溝正史作品などでもおなじみである。
首なし騎士とは何者か?
なぜ首を持ち去るのか?
物語が進むにつれ浮かび上がる意外な真実とは?
探偵役のイカボットとともに、首なし騎士ミステリーを紐解いていく面白さを堪能しよう。

 

ハロウィンの夜にはぜひ、『スリーピーホロウ』でホラーな気分を味わって見ては?