エウレカの憂鬱

音楽、映画、アニメに漫画、小説。好きなものを時折つらつら語ります。お暇なら見てよね。

【アニメ紹介】世界を革命せよ『少女革命ウテナ』

1997年に放映され、華麗な少女漫画風の絵柄と前衛芸術的な手法を駆使した演出、どろどろの愛憎絡み合った心理描写、恣意的で哲学的でありながら謎めいたストーリーなど、アバンギャルドな作風で現在でもカルト的な人気を誇る本作。監督は美少女戦士セーラームーン幾原邦彦。企画は幾原や漫画家のさいとうちほらによって結成されたビーパパスである。

わたしも、放送当時は子供だったため綺麗な絵柄だが内容が意味不明という印象だったが、大人になって再度視聴してみると独特の味わい深さに唸ってしまった。

ということで今回は少女革命ウテナの見所を紹介してみる。

 


●概要

全寮制の鳳学園中学二年生の天上ウテナは、子供の頃王子様に救われた過去を持ち、それから王子様に憧れるあまり王子様になろうとしてしまった少女で、学生服に身を包み運動神経も男子顔負け、 女子たちの黄色い声援も浴びるというベルばらのオスカル顔負けの男装の麗人である。

そんなウテナはある日、学園の中庭にある薔薇園で、生徒会の西園寺と彼に頬をぶたれる姫宮アンシーを目撃する。実は西園寺の所属する生徒会の面々は、学園の裏の秘密の森で世界を革命する力と薔薇の花嫁であるアンシーを手にするための決闘を繰り広げていたのである。

ある日親友の若葉に対し、その想い人だった西園寺がした酷い仕打ちに怒ったウテナは、そうとは知らず西園寺に決闘を申し込んでしまう。

かくしてウテナは、世界を革命する力をかけた決闘へと巻き込まれていく。

 

見所①唯一無二の世界観

切り絵の飾り枠や薔薇の花、お城と王子様、古めかしい洋館風の学園、秘密の森、美しく謎めいた生徒会の面々、そして男装の麗人ウテナ

少女漫画的記号をこれでもかと散りばめた本作。

影絵による場面転換や、演劇的な台詞回し、唐突に現れる平面的な切り絵の薔薇などなど、その演出面は前衛的で寺山修司のアングラ演劇を連想させるものとなっている。

アニメーションであることを十二分に発揮したロマンチックで可憐な絵柄とアングラで前衛的な演出の妙が織りなす唯一無二の耽美な世界観は一見。


見所②深い心理描写

さいとうちほのデザインによる美形キャラクターたちが数多く登場する本作、外見もさることながら特筆すべきはその複雑な内面描写である。

近親相姦、同性愛、嫉妬、憧憬、野心……人間の内に秘めたあらゆる情念を実に繊細にそれでいて蠱惑的に描いた深いキャラクター造形も本作の魅力である。我々人間がそうであるように、登場人物たちの本心は彼らの言動とは別のところにある場合が多く、作品はそれを安直に示してはくれない。それが作品を難解にしているとも言えるが、だからこそ、その端々に垣間見れる本心を知った時、その人間らしさがいじらしく思えるのだ。

 

見所③荒ぶるシュールギャグ

こちらもタイトルや作品説明では想像がつかないであろうが、ウテナはギャグにも力が入れられている。

影絵少女のくすりとくるちょっとブラックな掛け合い、七実主役回の振り切ったシュールなギャグセンスなどシリアスの中にもしれっとギャグを挟み込んでくるのが恐ろしい。

きわめつけは暁夫と冬芽の謎のドライブパート。これは何度見てもツッコミを入れざるを得ないレベルのシュールさである。ちなみに作中にはツッコミはいないのであしからず。


見所④華麗な音楽

ウテナは音楽の面から見てもこだわって作られている。本作は天井桟敷万有引力などアングラ演劇界隈の重鎮、J.A.シーザー作曲の合唱曲を劇中歌として使用している。放送当時、視聴中やザッピング中に耳に入った「絶対運命黙示録」が頭の片隅に残っている人も多いだろう。

二期のエンディング「バーチャルスター発生学」のアレンジは、ギターのイントロやリフなどハードロックとして聞いても大変かっこいい。

劇伴を担当した光宗信吉は、華麗な映像にマッチしたエレガントな曲から、現代音楽のような怪しげで恐ろしげなもの、クールなジャズ風など色彩豊かなオーケストレーションで作品を彩っている。とくにアイキャッチの完成度が素晴らしい。

また、オープニングの「輪舞~Revolution」は、90年代アニソンの代表の一つといっても過言ではないだろう。間奏もかっこよくラストの転調のカタルシスが半端ないので、ぜひフルで聴いてほしい名曲である。


見所⑤謎を呼ぶストーリー

ウテナは全39話だが、先の読めないストーリーで一度観始めると止まらなくなってしまう作品でもある。

長編ものの宿命として繰り返しの展開もあるにはあるが、それぞれ飽きないように変化させ魅せてくれる。


王子様の正体とは。

決闘の目的とは。

薔薇の花嫁とは何者なのか。

そして世界を革命するとはどういくことなのか。

回をおうごとに解き明かされ、また深まっていく謎。


その難解さから現在でもファンにより多くの考察が展開されているウテナであるが、作品随所に散りばめられた幾つものメタファーや登場人物たちの描写の端々から物語を読み解いていくことができる。

39話に渡り蜘蛛の糸のように張り巡らせたファクター、積み重ねられたウテナとアンシーの関係やあらゆる感情を一気に解放する最終回は大変見事であり、ある種爽やかな視聴後感をもたらしている。


●現実を革命するウテナ

90年代のセル画アニメの成熟期に燦然と現れたウテナは、個性的などという言葉では言い表せない、まさに総合芸術として完成された怪作である。

また、おとぎ話から綿々と受け継がれた騎士と助けられる姫というロマンスの構図をそのまま利用しながら、王子役に少女を据えることによりその矛盾を意識的に暴いており、それを新たな現代の説話たるために再構築を施している。これをディズニーが「アナと雪の女王」を発表する15年以上前に夕方6時台のアニメで放映したというのは驚きしかない。

美少女戦士セーラームーン」でロマンスにおける男女の役割の逆転という革命をアニメで魅せた監督が、セーラームーンですら抜け出せなかったロマンスの孕む矛盾、つまり助けるものと助けられるものという超えられない立場の格差をついに打ち砕いたのが、この「少女革命ウテナ」であったのだ。

少年漫画における世界を守る少年英雄像を破壊した「新世紀エヴァンゲリオン」と同時期に、少女漫画における王子に助けられ幸せになるお姫様像を破壊したウテナは、まさに物語の外の世界でも革命を起こしていたのである。


2017年に20周年を迎えた少女革命ウテナ。作風から好き嫌いがはっきりと分かれる作品なのであまり強くはオススメできない(ここまで書いていまさらだわね)が、合う人には本当に麻薬のようにキマるので試してみる価値は大ありである。

ちなみに巷では百合作品(いわゆる女性の同性愛もの)ということで名前が上がることがあるが、この作品においてそれは耽美演出の一環であると断りを入れておく。主人公ウテナヘテロであるし、作中にはレズビアンの女性も出てくるには出てくるがあくまでシリアスであり、ピュアできゃっきゃウフフした百合描写は皆無なので、そういうものを目的に観ようとする方にはあまりオススメはできない。

逆に、どろどろした少女漫画的な心理描写やキラキラな絵柄や耽美表現に耐性がある人や哲学的な小難しいものが好きな人であれば楽しめる可能性大なので、是非全話視聴してほしい。

 

ウテナ好きさんにお勧め作品

ベルサイユのばら池田理代子

もはや説明不要だろう!これもやはり革命している。歴史モノとしても素晴らしい!オスカル様!麗しい!

帝一の國」古谷兎丸

耽美な世界観とシュールギャグのバランスが素晴らしい学園政治闘争コメディ。

ルナティック雑技団岡田あーみん

可憐な絵柄で繰り広げられるシュールギャグの境地。変態執事の黒川が良キャラ、ゆり子はもはや狂キャラ。

 

 

絶対!運命!黙示録!

 

 

少女革命ウテナ 絶対進化革命前夜

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