エウレカの憂鬱

音楽、映画、アニメに漫画、小説。好きなものを時折つらつら語ります。お暇なら見てよね。

【漫画考察】『鬼滅の刃』見え隠れする鬼退治と製鉄民

 

今回は、最近話題の鬼滅の刃を取り上げてみたい。

直接的なものはある程度避けたつもりだが、関係性なんかのソフトなネタバレがあるので単行本未読の方は注意注意!

 

諸兄は鬼滅の刃に散りばめられたあるコードにお気づきだろうか。

キーワードとなるのは〝鉄〟である。

今回はこのキーワードから鬼の正体を考えていこうと思う。妄想爆発注意だぜ!

 

桃太郎の鬼は製鉄民か

鬼滅の刃は大正時代を舞台とした鬼退治の物語であるが、鬼退治といって思い浮かべるのは日本人ならば桃太郎だろう。

桃太郎の退治する鬼は実は製鉄民だったのではないかという考察があるのをご存知だろうか。製鉄民と言うのは読んで字のごとく、鉄を製造する技術を持った人々のことである。製鉄の技術を持つということは、鉄の錬成、武器の製造イコール武力を持つということであり、古代にはかなりの力を持った製鉄民の国が、日本に存在していたと考えられる。その中で中央政権と敵対した、いわゆる"まつろわぬ民"が土蜘蛛やら鬼などと呼ばれていたのである。

つまり桃太郎の話は、中央政権が反対勢力の国を滅ぼしその技術を奪い取ったことの寓意とも取れるのだ。

 

鉄にゆかりのある登場人物たち

鉄のイメージの話に戻ろう。

ここからは鉄イコール製鉄と捉えていく。実はこの作品の中には、製鉄と縁が深そうな人物が沢山出てくる。

 

まずは主人公の竈門炭治郎。

カマド、炭と名が表す通り、炭治郎の家は代々炭焼きである。この木炭はたたら炭ともよばれ、たたら(風を鞴に送って火を焚き鉄を溶かす)に不可欠なものだ。また同じく生業にしているであろう杣についても、かつては士農工商の外の仕事であり、山師や鍛治師とともに古代製鉄民とは縁が深い。

柳田國男らの著作にも炭焼長者として紹介されている「炭焼藤五郎(芋掘り藤五郎)」の説話では、やはり炭焼の藤五郎は鉱山師と関連づけられている(イモは鉱山用語で富鉱)。これは無欲な炭焼(芋掘り)藤五郎の元に観音様のお告げを聞いた姫が嫁に来て金塊を見つけ幸せになるという類の話だが、一説にはこの姫が顔に痣があると伝えられているのが興味深い。

さらには竈門家に代々伝わるヒノカミ神楽は、名前からして明らかに出雲神楽であろう。出雲神楽は中国島根雲南地方に伝わる伝統芸能で、日の神アマテラスオオカミが天岩戸にこもった時にアメノウズメノミコトが踊った舞とされ、その内容は出雲の斐伊川にまつわる神話だとある。古代出雲は鉄の一大産地であり、中央に匹敵する力を持った国であった。斐伊川も調べれば製鉄とは縁深い。

因みにタタラ場と森の戦いを描いたもののけ姫の舞台も出雲である。

 

次に炭治郎の育手、鱗滝左近次

その名はまさに水の呼吸らしいものであるが、彼が被っている面は天狗だ。

天狗は山中を鉱脈やたたらの原料となる木を求めて漂白した製鉄民と、その系譜である山人、野鍛治、鉱山師と重なる。天狗のうちわは風を起こすうちわは鞴につながりに天狗の赤い顔は丹を思わせ、さらに火を間近で扱う熱せられた顔のようでもある。

かの水木しげる御大は天狗倒しという山中の怪を紹介しているが、人の分け入らぬ深山で木が倒れる音を聞くというもので、恐らくサンカはじめ漂泊の民や下界との交わりの薄い山人の生活音を聞いた里人の驚きから来ているだろうと思われる。

 

そして水柱の冨岡義勇

冨岡はクールに見えてただの天然で口べたというギャップが素晴らしい(贔屓目)炭治郎の兄弟子である。

冨岡の名は富んだ丘、つまり鉱脈の山を表している。また、たたらのために鉄を採掘したその下流では土が富むと言われているため、上流から流れ出た土砂が肥沃な丘を築いたとも取れる。鉱脈師、山師との繋がりを感じる名前である。

 

鋼鐵塚をはじめとする鍛治師たちなどは、まさに役柄から明らかである。彼らの名は皆鍛冶や鉄に関するものになっている。鋼鐵塚、鉄穴森鋼蔵、小鉄、鉄井戸、極め付けは鉄地河原鉄珍(なんというすてきな名前!)と、鍛治師らしい金物の名前をしており、揃ってひょっとこの面を被っている。ひょっとこは火男に通じ、鍛治や製鉄と縁深いし、彼らが日輪刀を打つために特殊な鉱石を利用することから、山師としての一面も見て取れる。

ちなみに物語中、鋼鐵塚が負傷し一時的?に隻眼となるシーンがあるのだが、これは鍛治の神である隻眼のアメノマヒトツノミコトを意識してのことであろう。鍛治の神、山神には隻眼やひとつ足の伝説が多い。溶けた鉄や火を見続けて視力が悪くなる、たたらを踏みすぎて足が悪くなる鍛治の職業病を表しているともいわれている。

そして鍛治師たちは離れた隠れ里に住んでおり、それがまたまつろわぬ民の末裔である証なのでは?という妄想を掻き立てる。

 

炭次郎の味方となる鬼の女性珠代。

再び炭焼藤五郎の話になるが、この類の説話では、藤五郎の元に嫁いでくる姫の名前に「珠」の字が入っている。その理由は定かではないが、藤五郎が鉱山師ならば、珠はもちろん金銀財宝、鉱石のことだろう。鬼に金棒という言葉もある通り、鬼は五行でいうところの金気と結びつきやすい。

ちなみに藤五郎の名前にもある「藤」の花。これは作中で兄が嫌う花とされているが、かつて鉄の持ち運びの籠などを藤蔓で作っていたことから製鉄とは縁深い花である。日本の地名で藤が付く場所は鉱山との関連が高く、よくダイダラボッチ(これもダイダラ→たたら、というように製鉄民のイメージを持つ)の山崩し、山づくり伝説と共に語られている。

カナエとカナヲのカナは、金に通じる。

なんてのは流石にこじつけと言われるかな?

 

そういうわけで、主要な登場人物たちの由来に製鉄民の影が見えたところで、先ほどの製鉄民イコール鬼の図式を思い出してほしい。

 

鬼舞辻と鬼滅隊の関係は?

鬼滅の刃の敵の総大将の名前は鬼舞辻無惨様。気まぐれに部下を殺しまくる稀代のパワハラキャラである。この無残に対し味方陣営のボスであるお屋形様は、同じ一族であるというような意味深発言をしている。鬼と産屋敷は根が同じであるということである。

前項と本項を踏まえてみる鬼滅の刃は、鬼の子孫が鬼を退治する話とも読めるのだ。

 

ヒノカミ神楽と天孫信仰?

竈門家が踊っていたヒノカミ神楽は、アメノウズメノミコトの舞であるといった。これは前述の通りアマテラスオオカミを出現させる巫女の舞であり、竈門家の花札の耳飾りも旭日模様、つまり太陽の出現を表していることから、竈門家が日の神に仕える家であると分かる。ただ炭治郎の夢でも最初の剣士?と炭治郎の祖先が出会う場面が描かれていることから、竈門家は日の呼吸の祖ではないだろう。

竈門家と日の呼吸の関係がこれからの鍵となるのかもしれない。

 

鬼VS日の神であれば古代出雲をはじめとするまつろわぬ氏族VS天孫系という至極単純な対立構造であったところ、この作品ではヒノカミの力を手にした鬼の子孫が鬼(鬼舞辻)を退治するという構図になってしまっているのが面白い。

たしかに鬼殺隊は政府非公認だしお上(天孫系の天皇家を戴く大正政府)は関係ないかんじである。

またなんというか複雑になってきて考察が滾るというものだ。

 

以上はほぼほぼ想像の域どころか妄想の類であるが、作者がキャラクターの名前にあれほど気を遣っているからには、その背景を邪推せずにはいられない。

アニメも好調の鬼滅の刃。これからも目が離せない。