友人に勧められてみたホラー映画。
スナック片手に観れる程度のゴアで、ホラーというよりサイコスリラーのようなかんじ。
ちょっとくすんだ東欧系のカラーリングや、レトロなファッションと舞台美術、カメラワークなんかは大変かっこよかったのだが、一度見ただけでは当たり前だが全容を掴むことはできなかった。
かといってもう一度見たいかと言われればそれほどでもない。
ちょっとネタバレありなので注意!
ちょっと気になったところ
70年代冷戦当時の時代背景を取り入れているのはわかったが、本筋と絡むことが少なく余計感は否めない。
せっかくのリメイクなのだから、がっつり情勢をシナリオに組みこんでくれても良かった。
恐らくはナチスの比喩としての舞踏団を意識させたかったのだろうが、魅力的な素材なだけに少し勿体無い。
博士と妻のくだりは、もう少し本編にからませられたのではないだろうか。そもそも博士はなんのために出てきたのか。単なる探偵役でなく、女性を守れない男性性のシンボルかとも思ったが、実際の演者はマダムブラン役のティルダなのでそういう部分も弱い。なんであの人スッポンポンで転がされたの?
警官の男性がいたため女性だけで舞台を構成するという意図とは違うだろうし。
もう一つ言うならば、ラストのサスペリウム降臨のシーンなんかはまるでデウスエクスマキナ。いかにも雑にジャバザハット率いる敵対勢力の支持者たちを粛清していったが、これも善なる万能神感、ともするとアメリカンな正義のスーパーヒーロー感が拭えない。
圧巻のダンスシーン
ただダンスシーンは圧巻である。
謎服&肌色パンツで繰り広げられる前衛的なコンテンポラリーダンスは真似したくなるシーンだ。
最後の肌色注意のダンスも、まるでディオニソス秘儀の乙女たちか、はたまたサバトかというような怪しげな雰囲気が素敵だ。ただしその後の潰譚(by 伊藤潤二)調のグロシーンはやり過ぎて色気もなにもなかったのでちょっと残念。
まとめ
視聴前に男女で意見が違うだろうという話を聞いたがたしかに納得。
ただ女性側から登場人物にシンパシーを感じるかという点ではノーである。
男性監督が描く耽美的な女の園や、未知のものとしての女の怖さや魔女たちのエネルギッシュさの描写は面白いが、あくまで登場人物は男性のなかの幻想の女であり、生身の女とは乖離しているというのが感想。だからこそ魅力的で興味深いというのはあるだろう。
ぐちゃぐちゃと行ってしまったが、男だろうが女だろうがどっちでもいい、そんなことよりも個人の感想として言いたいのは、
高尚なのかB級なのかはっきりしてよという一点である。
映像美はたしかに納得のものなので、グロが平気なら一度見てみるのも良いだろうか。