エウレカの憂鬱

音楽、映画、アニメに漫画、小説。好きなものを時折つらつら語ります。お暇なら見てよね。

【映画感想】『ダニー・ザ・ドッグ』イノセントなジェット・リーにメロメロ

リュックベッソンの作る映画は『レオン』しかり『グランブルー』しかり、イノセントな男の描写が秀逸である。

ベッソン作品は物語の辻褄よりも感情やロマンを優先する作風なので、合う人には合うが合わない人には合わない。

ちなみに私は好きな方だ。

 

本作は『少林寺』シリーズ、『ワンチャイ』シリーズでお馴染みのカンフースターのリーリンチェイ(ジェットリー)を主役に据えたアクションバイオレンスヒューマドラマである(なんじゃそら)。

ちなみに今回は作品の名義通り、リンチェイでなくジェットと呼びたい。

幼い頃、闇金融組織のボスに攫われ、人間ではなく敵を排除する感情のない闘犬として育てられたダニー(ジェット)が、とあるきっかけで出会った盲目の調律師のサム(モーガンフリーマン!)とその娘のビクトリアとの交流を経て人間へと生まれ変わるというストーリーである。

見所は二つ、ジェットのアクションと演技だろう。

 

さすがの息を飲むアクション

リンチェイ、いやジェット(ややこし!)といえば、子供の頃より北京の体育学校で武術を学び、武術の全国大会で5度も優勝したという伝説を持つ武道家としても有名で、ワンチャイのウォンフェイフォンなどで見られるような美しささえ感じられる凄まじいカンフーアクションが売りである。そのジェットが冒頭、いつもとは違うまさに闘犬のような野生の殺し合い、見ている方が痛々しくなるような暴力シーンを繰り広げる。素手で殴って人を殺すことってできるんだろうな、と実感するような映像である。ダニーの精神が成長するにつれ戦い方も理性的になっていくのも面白い。達人だからこそ演じられる変化で、これはジェットリーでなくては出来なかったのではないだろうか。

 

獣から人へと変わっていくダニー

感情が未発達の犬のような目、戦いの時の凶暴な殺気。それとはまるで対照的な初めて人と触れ合ったときの怯えた表情や、イノセントな笑顔。サムたちと触れ合って人間らしくなるにつれてその表情も豊かになっていく。この表情の演技が本当にすごい。

この頃のジェットはすでに40を超えており、私も視聴前あらすじだけ見たときには、ジェットがいくら童顔でももっと若手がやった方がいいのでは?と危惧していたものだが、なんのことはない。見ているうちに少年にしか見えなくなってくるので不思議である。

40過ぎの男性の形容詞としておかしいのは重々承知なのだが、サムやビクトリアの愛情を受け人間性を取り戻していくダニーがかわいいのだ。特にこれはジェット・リーがもともと持ち合わせているものでもあるが、少年のような無邪気な笑顔が実にかわいい。

まさに「守りたい、この笑顔」。

 

イノセントな演技は良い俳優ならできるだろうが、秘めた強さを兼ね備えることはなかなか出来ないだろう。暴力性とイノセントさの共存、そして、ジェットリーが備えるある種の品の良さ・人の良さが、ダニーというキャラクターをじつに魅力的に見せている。

女性ならば肉体的には強いけれども、心優しく繊細なダニーの笑顔を守ってあげたいと母性本能くすぐられまくり、男性ならば狂犬ダニーの強さに滾りまくりだろう。

 

まとめ

ストーリー的には冒頭で述べたとおり、筋よりロマンを優先しているので、辻褄が微妙なところやいろいろ弱い部分もあるが、細かいところが気にならなければ良い映画だと思う。

特にヒューマンドラマ部分は秀逸だし、美しいラストにはぐっとくる。リュックベッソンが好きな人、ファイトシーンが好きな人(カンフー好きの人はそれとはタイプの違うアクションなので物足りないかも)、そしてジェットリーが好きな人には文句なしに勧められるだろう。

見終わった時に優しい気持ちになり、ダニーが大好きになる、そんな素敵な映画である。

 

おすすめです。

 

ダニー・ザ・ドッグ(字幕版)

ダニー・ザ・ドッグ(字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video