エウレカの憂鬱

音楽、映画、アニメに漫画、小説。好きなものを時折つらつら語ります。お暇なら見てよね。

【映画感想】『ヒットマン(殺手之王)』

ヒットマン」と検索しても数ある作品に淘汰され全く出てこない「ヒットマン」ことジェット・リー主演「殺手之王」の話をしよう。

 

あらすじ

香港でヤクザな商売をしていた日本人社長が炎の天使と呼ばれる(広東語だと熾天使)に殺された。社長のかけていた復讐基金の大金目当てに世界中の殺し屋が集まった。

中国の田舎から出稼ぎに出てきた殺し屋志望の青年フウ(ジェット)。彼の夢は田舎の母親に家を建ててやること。戦闘能力は高いのにどうしても殺しが出来ず貧乏生活を抜け出せないフウ、最後の望みをかけて復讐基金の争奪戦に参加しようとするも会場で門前払いを食ってしまう。困ったフウに手を差し伸べたのは、詐欺師のノウ、彼もまた基金の大金を狙っていた。

 

ジェット先生がうだつの上がらない貧乏青年を好演。釣り銭が違うとスーパーのレジで延々揉めたり、物乞いのおっさんと小銭の取り合いをしたり、ノウに奢ってもらったレストランの料理をタッパーで持ち帰ったりとせせこましい&意外と図々しく面の皮が厚いフウは、ジェットの素朴な風貌も相まって微笑ましい。そしてやはり先生の蹴りは凄まじい!美しい!

ちなみに本作はリーサルウェポン4でローナを華麗な裏拳ならぬ裏脚?で一撃ノックする直前の公開だ。鼻の黒子が見れる最後のチャンスでもある。

この映画で面白いのはいつも無敵なジェット先生が、全般割と苦戦しているところである。スカッとするアクションを期待している諸氏は物足りなさを感じるだろうが、個人的には新鮮でよかった。ワンチャイと同時進行でフラッシュファイターやラスチャイを撮る人なだけあって、俺様映画にしないところがジェットの良いところだろう。

この映画でジェットを食う勢いでいい味出しているのがノウを演じる名バイプレイヤーのエリック・ツァン。胡散臭く抜け目がないがどこか愛嬌のあるノウ、キャラ的にはシュワちゃんの『ツインズ』のような典型的な組み合わせだが、欧米ではチビだ半人分だとなにかといじられるジェットが高身長に見える稀有なバディなので結構好きだ笑

ノウの娘役のジジ・リョンも清潔感があって良い。マイフェイバリットオブ・海外女優であるロザムンド・クワン(ワンチャイのイーさん役の人)に迫る美しさだ。

ブリジット・フォンダといいケリー・コンドンといい人種年齢問わずジェットの共演者は素敵な女優さんが多いなぁ。

 

大陸➕香港、vs西側諸国

ごくありふれたアクション映画だが、その背景はなかなか興味深い。

本作は香港の中国返還翌年に公開。当時の中国と香港の格差は今の比ではなかっただろう。

本作の主人公フウは中国からの出稼ぎ労働者で、冒頭で唐辛子を混ぜた卵とじを作っていたことから中国北部の出身と思われる(広東や香港料理は本来はあまり辛くない)。箱詰めのアパートで同郷の男たちやインド系(良い奴。イギリス総督の兵士にインド人が多かったので香港は意外にインド人が多い)の殺し屋仲間と一緒に住んでおり、大陸出身というだけで下に見られる。フウにとってイギリス統治下で資本主義を謳歌した香港の金銭感覚や家族関係は理解しがたいが、その理解を助けるのが相棒のノウである。香港で強かに生き延びてきた小悪党のノウは、大陸からきた純朴だがたくましいフウを使って稼ごうとする。と同時に自分の売り込みかたや虚勢をはる手段、ドライでめまぐるしい大都会香港での身の処し方を教えていく。

そして本作の敵は、当時90年代当時、香港で大きく商売を展開していた日本人と、そのボディガードの欧米人。

本作は香港人と大陸人がその差異を乗り越えて手を携えて、(経済的に)強い日本や西側諸国と渡り合っていくという内容にも読み解ける。

 

というわけで中国返還後の新生香港の頑張るぞ宣言みたいな側面のある映画だが、ラストもいい感じに前向きに俗っぽくて私は結構好きである。

ダサかっこ可愛いジェット先生はじめ、したたかで人間味があるキャラクターたちも魅力的だし、炎の天使の正体を巡るサスペンスも適度に面白い。

ちょっと脚本がチープなところはご愛嬌笑

気楽に見れておススメだ。

金曜の夜とかビール片手に楽しみたい作品。

 

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