エウレカの憂鬱

音楽、映画、アニメに漫画、小説。好きなものを時折つらつら語ります。お暇なら見てよね。

【漫画感想】『カクシゴト』パパの秘密のかくしごと

『カクシゴト』は『かってに改蔵』や『絶望先生』の久米田康二 の最新作である。

後藤可久士には娘の姫に重大な秘密を隠していた。それは自身が下ネタ漫画家、つまり"描く仕事"をしているということである。カクシゴトは可久士と天然娘の姫の周りで巻き起こる漫画家あるあると時事ネタをふんだんに盛りんだショートギャグである。

 

まず本屋で目に入ったのは鮮やかな青空が印象的なわたせせいぞう風の表紙であった(そういう意図せぬ出会いがあるという意味では本屋で紙の本を購入するのは意味深い)。ジャケ買いというのだろうか、買ってから調べるとどうやら絶望先生と同じ作者だというではないか。

この久米田康二との最初の出会いは高校で友人に借りたかってに改蔵であり、その頃下ネタ耐性ゼロだった私はすぐに苦手意識を持った。その後アニメ絶望先生のオープニングのかっこよさに痺れ単行本購入を試みるも、巻数が多過ぎていて無念の断念。

どうやら絶望先生が最終回を迎えたという噂を聞き、ネットで禁忌のネタバレをしてびっくり。わたしが普通のギャグ漫画と思っていた絶望先生、そしてかってに改蔵についても最終回で凄まじいどんでん返しがあったというのである。

ネタバレしか見ていなかったにもかかわらずこのどちらのネタバレ(あるいは伏線)に対しても鳥肌がたつほどびっくりした。これは予想できない。わたしはちゃんとストーリー追ってこの壮絶どんでん返しを体感したかったと、改めてネタバレの業を思い知ったのであった。

そこから久米田康二の印象は、下ネタ時事ネタと美少女が得意なギャグ漫画家→ものすごい構成力を持ったギャグ漫画家に変わった。

そんな作者の新作カクシゴトでも、冒頭カラーページから伏線の予感でいっぱいである。まるで一枚絵のような美しいカラーページでは高校生になった姫が父親の秘密を知るというアフターストーリーが語られるのだが、ここでは可久士が漫画家を辞めている風であり、しかもその生死がわからない不穏な空気が漂っている。現行で6巻まで出ているが、その最初と最後にこのアフターストーリーが楽しい本編とは別に続いているのである。可久士の本当の秘密とはなんなのか、気になって仕方がない。

本編に関しては、下ネタはほぼなく、絶望先生から続く時事ネタは健在である。ただそれもエッセンス程度で、メインは漫画家あるあるネタと父娘のほっこりエピソードである。この漫画家ネタが実体験に基づいているのか結構面白く、漫画家業界や出版業界ことがよくわかる仕組みになっている。しかも毎回連載漫画風になっているなど小ネタも満載で楽しい。個人的に特に巻末コメントがツボである。

基本お気楽な作風の合間に、アフターストーリーに通じるような可久士の秘密が見え隠れしており読む手が止まらない。

可久士はどうなってしまったのか?

箱の秘密とは?

姫の母親の秘密とは?

楽しい本編と散りばめられた謎、洗練されたコマ割りと絵柄・綺麗なカラーページ、そして可久士と姫の癒しのエピソード。これらがふんだんに盛り込まれたカクシゴト。次巻が楽しみな一冊である。