エウレカの憂鬱

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【漫画考察】『進撃の巨人』リヴァイ兵長の人気と日本人的英雄像

進撃の巨人の人気キャラクターである、リヴァイ兵長。もちろん私もこのキャラクターが大好きである。

リヴァイ兵長といえば人類最強の兵士だが、小柄で刈り上げで三白眼で口が汚く暴力的で潔癖症という字面だけ見ると最初の一文以外イマイチなキャラクターにも思える。でも実際は大人気。

では何故世の中の人がこのリヴァイ兵長に魅力を感じるのか。リヴァイのかっこよさについては巷に多くの記事があるので、今回はそこではあまり描かれない側面から魅力を探ってみたい。

もくじ
1.外見的な魅力
   ①日本人的強キャラはチビ?
 ②リヴァイ兵長の元祖は牛若丸
 ③リヴァイ兵長=世界の中の日本人
2.性格的な魅力
 ①作中屈指の仕事人
 ②人類最強の中間管理職
3.構造的な魅力
 ①キャラにギャップを重ねると人間になる
 ②対象ごとに刺さるアンカー

○前提条件として

まずは、明らかな人気の理由をここで挙げる。

  • 強い
  • 仲間想い
  • クール

人類最強で、英雄とも呼ばれる作中最強人物で、死にゆく仲間の手を握り巨人の絶滅を誓うシーンなど、仲間を大切にする描写は印象的。ただ、強いけれど仲間想いが人気なことに理由はいらないのはご存知の通りだろう。

また強くてクールという特徴も人気の定番である。クールである部分に余裕を感じるので「強さ」が倍増して見えるのが理由だろう。クールなキャラクターは冷徹に見られがちなので実は仲間想いというのはベタだが王道のギャップである。

ただし、これは多くの作品の人気キャラクターに共通するもので余り考察の余地はなさそうである。王道の設定は人気がK点突破する直接的理由ではないからだ。

それ以外で魅力を探ってみることにしよう。

 

1.外見的な魅力

①日本人的強キャラはチビ?

まずリヴァイの外見的特徴から考えてみよう。

身長は160センチと成人男性としては小柄な方である。三白眼気味で人相は悪め、軍人らしく後ろは刈り上げているも前髪はさらりとしたターミネーター2エドワード・ファーロング系(笑)である。クラバックという貴族風の襟飾をつけておりハンカチを持ち歩くなど身だしなみはしっかりしているようだ。

小柄なやつ(余り強そうではないやつ)が強いというのは日本の古代からのお約束である。 『古事記』のヤマトタケルは敵地潜入の際女装をしており、見た目から敵の油断を誘っている描写であり古代の英雄像がゴリマッチョではなかったと分かる。

源平合戦で大きな戦果を挙げた源義経も小柄な男であると描写される。

昔話の『お伽草子』の「一寸法師」、『金太郎』、馬琴の『南総里見八犬伝』などは明らかで、小さいもの、一見か弱そうな者が大きなものを打ち倒すという日本人独特の〈小さ子〉に対する信仰がよく見える。これは民俗学でいう小さい者(子供・背丈の低い者・か弱い者)には神の霊威があり、強大な力を持っているという考え方である。

日本のアニメや漫画では欧米に比べて戦う少年少女が圧倒的に多いと云われるが、その根底にはこの〈小さ子〉信仰が流れており、小さいのに、ではなく小さいから強いという考え方があると考えられる。

現代の漫画にも引き継がれており、代表的なところで『幽遊白書』の飛影、『H×H』のキルア、『BLEACH』の日番谷冬獅郎、『るろうに剣心』の剣心、『ヴィンランドサガ』のトルフィンなどがそうだろう。

剣心を除いてチビでクールで目つきが悪いというテンプレをベース(あくまでキャラ造形の基盤)に持っており、リヴァイもこのテンプレを踏襲しているといえる。

絵面的にもダイナミクスがあって良い。

 

②リヴァイ兵長の元祖は牛若丸?

リヴァイ兵長の造形で最も元祖として似つかわしいのは飛影では無く、先述した源義経の子供の頃でもある『牛若丸』だろう。

牛若丸は〈小さ子〉信仰にのっとった前髪の残る(元服前)の小柄で身軽な少年英雄であり、大男の弁慶を軽く打ち負かす強者であると同時に、源義朝の遺児として迫害を受け鞍馬山に出家に出された貴種である。

リヴァイ兵長は年齢こそ30代のおっさんだが、小柄で一見華奢(着痩せタイプ笑)、身軽に飛び回り巨人を倒している。

一見ジョンコナー風のあのツーブロは、元服前の前髪や若衆髷を想起させないこともない。

地下街のごろつき上がりという割に、クラバックという襟飾や身だしなみの清潔さ、趣味は紅茶など気品がありそうな特徴を持っており、ストーリーが進むと明らかになる出自は、王家の武家だったが迫害を受けて隠れ住むようになったアッカーマンという一族の末裔であると判明する。

牛若丸は成長して義経と名乗り、源平合戦で多大な成果を挙げた英雄となる。

これも進撃の巨人世界で巨人を倒し人類を救う英雄として描かれるリヴァイと重なる。

 

③リヴァイ兵長=世界の中の日本人

日本人含むモンゴロイド(アジア人・黄色人種)は人種的特徴でいえば、コーカソイド(白人)・ネグロイド(黒人)と比べて小柄で線が細く、目鼻立ちもほっそりして小ぶり、比較的童顔といって良い。

進撃世界の日本人枠のヒィズル国人はキャラクター的にミカサであるが、イメージ的にはリヴァイが担当していると思われる。

リヴァイは小柄で目は比較的細め、童顔で黒髪である。同年代のエルヴィン、ハンジら始め他のエルディア人のキャラクターがコーカソイド的特徴を外観に強く持っている(また後半で出てくるオニャンコポンはネグロイド系の造形)ため、集合絵では、一見欧米人に囲まれたアジア人に見えてしまう。

そんなリヴァイが無双するという部分にある種のロマンを抱くことは、恵まれた体躯が全てではない小さ子信仰の土壌もあり日本人には受け入れやすいだろう。

 

2性格的な魅力

①作中屈指の仕事人

シンゴジラ』は欧米で不評だったが、その理由は主人公たちの背景(家庭・内面)の描写が薄かったという部分がある。日本においては労働とそれ以外の区別が明確ではなく、仕事が時として生き様を表していることも多い。リヴァイはその仕事が生き様を表す典型である。

言動が荒いため、初見では強調性がない一匹狼的なキャラクターを想像するが、実際は集団主義の中で己の役割を理解し全うする職人肌で、スタンドプレーをしないキャラクターである。

情が深い描写を描きながらも、大局を見て時には冷静冷酷な判断が下せる人物でもあり、よくある仲間想いのキャラクターとは一味違った理性的な大人の苦味を含んだ魅力として描かれている。

己を殺し全体(人類)を生かすために粉骨砕身する姿のストイックさに魅力を感じる人は多いだろう。

②人類最強の中間管理職

上司にしては仕事をしっかりとこなし、自分の役割をきっちり把握して、上司が間違ったら面子は守りつつ諫言をし、時には汚れ役も引き受けてくれる信頼のおける部下である。

逆に部下に対しても常にケアを怠らない気遣い上手として描かれている。

それが最もよく表されているのが、ジャンが殺人を躊躇った事でアルミンが初めて殺人を行った有名なシーンである。

殺人を後悔するアルミンに対しては、事実は変わらないと諭し、そのおかげで仲間が生き残ることができたと感謝を告げ重荷を降ろさせ、同じく殺せなかった後悔をするジャンには、自分の失態を受け入れるよう諭し、殺人を躊躇った判断を否定せず、考え方が固定してしまわないようにフォローした。

人類最強という肩書きと一見粗暴な言動の裏で、鎌倉から続く封建社会意識のまだわずかに残る日本のサラリーマン的な(それもベンチャーの社長や自由な熱血新人ではなく中間管理職)立ち位置での有能さがキャラクターに深みを与えているといえる。

 

3構造的な魅力

①キャラにギャップを重ねると人間になる

ここまでくればお分かりだろう、リヴァイ兵長の魅力はギャップといえよう。

  • 人類最強→なのに小さい
  • 粗暴→協調できる大人
  • クール→場合によっては気遣いもできる
  • 見た目若く天才風→歴戦のおっさん兵士

これらは矢印の前と後どちらかだけでは大した魅力にならない。

前半はただのテンプレキャラであるし、後半はただのモブキャラである。

これがいわゆる不良と捨て犬の法則であり、ギャップによって一気にキャラクターが深まる。

しかもリヴァイはここにさらにもう一段「かわいげ、人間臭い欠点」というトッピングをしている。

  • 人類最強→なのに小さい→チビをちょっと気にしている
  • 粗暴→協調できる大人→でも口下手で冗談がつまらない
  • クール→場合によっては気遣いもできる→潔癖で掃除に小うるさい
  • 見た目が若く天才風→歴戦のおっさん兵士→掃除の時はエプロンと三角巾

そこにさらに「多くの仲間を失って、彼らの命を背負って苦闘を続ける」という悲劇性で包む。

この何層にも及ぶギャップのミルフィーユにより、リヴァイ兵長というキャラクターが、キャラというよりもはや人間として魅力的に感じられる構造になっている。

 

②対象ごとに刺さるアンカー

ここまで多重構造になると間口が恐ろしく広くなるだろう。

少年たちには、人類最強、クールな吊り目キャラというだけでもう厨二心をくすぐられる魅力的なキャラだろう。

女性的には強いのに小さい、清潔そう、実は優しいなどギャップだらけなので母性本能や乙女心にアンカーが突き刺さること間違いなし。

また、BL好きの女性にとっては、リヴァイ兵長の身近に配置されたエルヴィンという上司、またはエレンという部下のそれぞれの主従関係というブロマンス的なポイントがあるようだ。

そして社会人にはリヴァイの仕事人としてのストイックさや部下への情の描写が憧れるポイントだろう(私も部下になりたい!)

 

○まとめ

リヴァイ兵長の魅力を自分なりに分析してみたが、当てはまった方はいただろうか。

 

ストーリーも示唆に富み、キャラクターも魅力的な『進撃の巨人』、これを機会にまたリヴァイ兵長のかっこよさを読み直して再確認してみてほしい。

 

ちなみに私はアニメより原作派。

原作の兵長は圧倒的に渋カッコよく見えるので好きです。