エウレカの憂鬱

音楽、映画、アニメに漫画、小説。好きなものを時折つらつら語ります。お暇なら見てよね。

【ドラマ考察】『鎌倉殿の13人』現代とリンクする名脚本

久々に大河を完走する。 クールドラマでさえすぐ脱落する最近の私にしては奇跡である。それもこれも今回の大河が大変興味深く面白いからの一言に尽きる。 最初は地元出身の一族の話なので身内的な義理で見始めた本作。 序盤で見知った地名にニヤニヤしながら…

【映画紹介】『恋する惑星』ビビッドな90年代香港に恋せよ

大好きな映画が4Kレストアになった。 まさか王家衛作品が日本でまた上映されると思わなかったので、嬉しさ余って2回も鑑賞してしまった。 せっかくの4Kレストアにも関わらず観たのは古いミニシアターだった(近くの大型モールの放映は1ヶ月を待たずに終わっ…

【漫画紹介】ペリリュー〜楽園のゲルニカ〜

昨日は8月15日の終戦記念日だった。 太平洋戦争終結から77年。今年ある戦争マンガが完結した。 自らの闘病を綴ったエッセイ「さよならタマちゃん」で有名な武田一義氏の漫画「ペリリュー〜楽園のゲルニカ〜」である。 水木御大をはじめ、戦争を知る漫画家世…

【漫画考察】『ゴールデンカムイ』近代国家の迷い子たち まとめ

【もくじ】 個人の発見 自由な明治の不自由な登場人物たち なぜ北海道が舞台なのか 尾形という明治人 近代の象徴・鶴見中尉 ゴールデンカムイとは _________ 個人の発見 江戸時代以前の近世と明治開花以降の近代の違いは何だろうか。 政治的には、…

【漫画考察】『ゴールデンカムイ』アシリパ 近代国家の迷い子たち③

○アシリパのキャラクター これまでに杉元と尾形について考察し、その中でアシリパについてアイヌ民族全体の具現かのように表現してきた。 彼女の名前がアイヌ語で新しい年を意味し、和名が明日子であることからも、明治という近代化の時代、日本による同化政…

【漫画考察】『ゴールデンカムイ』尾形百之助 補足〈尾形は救われたか〉

※未単行本話のネタバレあり 本稿【漫画考察】『ゴールデンカムイ』尾形百之助 1/3 近代国家の迷い子たち② - エウレカの憂鬱の補足です。 尾形は救われたか 漫画としては畳み掛けるような展開も怒涛の動から静のコマ割りも含めて、実にカタルシスに満ちた素晴…

【漫画考察】『ゴールデンカムイ』尾形百之助 近代国家の迷い子たち② 3/3

前へ【漫画考察】『ゴールデンカムイ』尾形百之助 2/3 近代国家の迷い子たち② - エウレカの憂鬱 ※本ページのみ未単行本のネタバレあり。 天から役目なしに降ろされた物はひとつもない 勇作に続き尾形の思考を否定する2人目の人物はお分かりの通りアシリパで…

【漫画考察】『ゴールデンカムイ』尾形百之助 近代国家の迷い子たち② 2/3

前へ【漫画考察】『ゴールデンカムイ』尾形百之助 1/3 近代国家の迷い子たち② - エウレカの憂鬱 尾形は完全な合理主義者にはなれない そんな尾形に自分の矛盾を意識させる思考のターニングポイントを与えた人物は2人おり、その1人目が腹違いの弟勇作である。…

【漫画考察】『ゴールデンカムイ』尾形百之助 近代国家の迷い子たち② 1/3

裏の主人公ともいえる尾形 杉元と対になるよう設置された物語の裏の主人公格ともいえる狙撃手の尾形百之助。 尾形も谷垣と同じく日露戦争を経験した第7師団の兵士である。元師団長の妾腹として生まれ、幼少期、父に捨てられ精神を病んだ母親を、葬式ならばさ…

【漫画考察】『ゴールデンカムイ』杉元佐一 近代国家の迷い子たち①

ゴールデンカムイに今更ながらはまってしまい、単行本も揃えて連日読んでいる。 本作は日露戦争後の日本の北海道を舞台に、アイヌの隠し金を探す物語である。 しかも北鎮部隊や203高地、網走監獄の囚人たち、五稜郭で敗れた旧幕軍の残党、そしてなにより今よ…

【漫画考察】『進撃の巨人』リヴァイ兵長の人気と日本人的英雄像

進撃の巨人の人気キャラクターである、リヴァイ兵長。もちろん私もこのキャラクターが大好きである。 リヴァイ兵長といえば人類最強の兵士だが、小柄で刈り上げで三白眼で口が汚く暴力的で潔癖症という字面だけ見ると最初の一文以外イマイチなキャラクターに…

【映画紹介】『スワロウテイル』90年代の都市幻想

本作は1996年に岩井俊二監督により製作された邦画である。 混沌として暴力的な世界観ながら、不思議な透明感に溢れた魅力的な群像劇となっている。 ○モラトリアムの物語 よく(悪い意味で使う場合の)雰囲気映画の代表のように言われるのを見るが私はそうは…

【アニメ紹介】『FLAG』レンズが写す争いと祈り

現実と地続きのリアルなロボットが登場する戦争を報道カメラマンの目線で描く意欲作『FLAG』を紹介したい。 あらすじ 内戦が続くアジアの架空の小国ウディヤーナ。その和平交渉の架け橋となった一枚の写真とそこに描かれた旗「FLAG」。和平協定を前にその平…

【映画感想】『茄子-アンダルシアの夏』郷愁と男たちの熱い戦い

過酷なロードレースが行われるアンダルシアを舞台にした人間ドラマ。 監督はスタジオジブリで作画監督として数々の作品を手掛けてきたベテランアニメーターの高坂希太郎。1時間弱の短い時間の中で、図らずもかつて背を向けた故郷のアンダルシアを、もっとも…

【映画考察】『シン・ゴジラ』日本人から探るゴジラの実像

2016年にヒットした庵野康明監督のシンゴジラを取り上げてみる。 ○本作のターゲットは日本人である 本作が海外でウケが良くないという話を聞くにつけ、なぜ海外の評価を気にする必要があるのかと疑問に思わずにはいられない。この映画は日本人による日本人の…

【映画感想】『海洋天堂』平凡にして偉大なるすべての父と母へ

素晴らしい映画に出会えた。 心を深く揺さぶられ、見終わったときに胸の中を暖かく重たい水で満たされたような、あるいは胸に大きな穴が空いてしまったような、切ないような、哀しいような、それでいてどこまでも優しく愛しい言葉にできない感情に打ちのめさ…

【映画感想】『メイド・イン・ホンコン(香港製造)』

90年代香港は子供ながらに憧れの街だった。原色のネオンの看板、夜も眠らない高層ビル群の夜景、魔窟・九龍城砦、カンフースター、アジアであってアジアでない大都会。大人になって初めて訪れたときのあの高揚感は今でも忘れられない。ただその時すでに返還…

【アニメ紹介】『パンスト』愛すべきアメリカン風おバカコメディ

私は子供の頃テレビで『オースティンパワーズ』をみてあまりの下品さに驚いた思い出がある。それと同時に、アメリカのコメディのあまりの明け透けさに一種の異文化への憧憬のようなものを覚えたのも確かである。 子供の頃のそんなお下品でおバカで飾らない底…

【映画感想】『ダニー・ザ・ドッグ』イノセントなジェット・リーにメロメロ

リュックベッソンの作る映画は『レオン』しかり『グランブルー』しかり、イノセントな男の描写が秀逸である。 ベッソン作品は物語の辻褄よりも感情やロマンを優先する作風なので、合う人には合うが合わない人には合わない。 ちなみに私は好きな方だ。 本作は…

【映画感想】『サスペリア(2018)』

友人に勧められてみたホラー映画。 スナック片手に観れる程度のゴアで、ホラーというよりサイコスリラーのようなかんじ。 ちょっとくすんだ東欧系のカラーリングや、レトロなファッションと舞台美術、カメラワークなんかは大変かっこよかったのだが、一度見…

【映画感想】『野火』

塚本晋也監督の『野火』。 8月15日なので戦争ものをという謎の義務感でprimeで見つけたこの作品を視聴。前評判にビビりつつ見たが、やはり前評判通りだった。 フィリピンのジャングルで飢餓と銃撃の恐怖のなか彷徨う主人公を追う本作、敵が潜むジャングルに…

【漫画考察】『鬼滅の刃』見え隠れする鬼退治と製鉄民

今回は、最近話題の鬼滅の刃を取り上げてみたい。 直接的なものはある程度避けたつもりだが、関係性なんかのソフトなネタバレがあるので単行本未読の方は注意注意! 諸兄は鬼滅の刃に散りばめられたあるコードにお気づきだろうか。 キーワードとなるのは〝鉄…

【漫画紹介】『水鏡綺譚』無常の中に優しさが灯る中世妖怪草子

近藤ようこ氏の作品は不思議な魅力を持っている。 極力省かれた線や曖昧な背景、まるで 学生時代ノートに書き綴った漫画のような作画など、最近の書き込まれた漫画に慣れたものにはいささか物足りなく感じられるかもしれない。 しかし読んでみれば、その漫画…

【小説紹介】『残穢』これは怪談小説の極みである

絶対に家に置いておきたくない本。 『残穢』を検索すると必ず出てくるのがこの言葉である。これは元を辿れば、本作が山本周五郎賞を受賞した際の審査員の言であるのだが、読んだものはその理由を十二分に理解できる。 そう、本書は本当に家に置いておきたく…

【映画感想】『グラン・ブルー』

たまには感傷的に映画を語ろう。 初めてリュック・ベッソン監督の 『グラン・ブルー』を観た。 透明感のなかに残酷さと孤独感がたゆたい、しんと心に染み入るような静謐な映画だった。 この映画を見たときの明るくて陽気なのに哀しいというこの空気感覚は、…

【漫画紹介】『彼方のアストラ』極上のSFミステリー

『彼方のアストラ』がこのマンガがすごい一位になったそうな。 既読者からすると当然の結果なのだが、この機会に多くの人に知ってもらえるというのは嬉しい。 これを機に今まで書こう書こうと思って下書きに眠っていたこの感想をあげちゃおうと思う。 あらす…

【漫画紹介】『YAWARA!』オリンピックに向けてテンションあげよう!

正月のテレビ欄を見たらおや? そこにYAWARAの6文字が。 20年以上前の作品をなぜ今? と思ったが、そういえば来年は東京五輪だ。YAWARAを観ながらオリンピックへの機運を高めようぜ! ということだろうか。 YAWARAは20世紀少年の作者である浦沢直樹氏がビッ…

【アニメ考察】『どろろ』と民俗学的モチーフ おかわり

散見される民俗学的モチーフ 前回までの記事では、百鬼丸の出自についていくつかのモチーフを元に考察してみた。 今回は前回までの記事で拾えなかったモチーフについて書こうと思う。 アニメの進行に沿って増やしたいくのでもし興味がある方がいたならば、思…

【アニメ考察】『どろろ』と民俗学的モチーフ 後編

【アニメ考察】『どろろ』と民俗学的モチーフ 前編 - エウレカの憂鬱 前編のつづき 4.百鬼丸は鬼か桃太郎か 少し戻るが百鬼丸が捨てられた理由を、もう少し時代を遡って考えてみよう。 百鬼丸は手足も目鼻もない不具の体であり、これは一種の異常出生である…

【アニメ考察】『どろろ』と民俗学的モチーフ 前編

ちょっと論文ぽいタイトルを気取ってみたが、内容はまあまあ薄味であると先に言っておく。どのくらいかというとカルピスを10倍の水で薄めたくらいでございますのでそこんとこよろしくおねがいします。 1.あらすじ 2.流された英雄、百鬼丸 3.百鬼丸のモデルは…